医局に入ってスキルを身につけたいけど医局人事が嫌…
医局人事で田舎病院に行けと言われたら拒否できるのかな…
医局に入った医師(医局員)に待ち構えているのが、医局人事です。
医局人事とは、教授や医局長が医局員の勤務先の病院を決めること。かなり強引に決まることもあります。
医局員は、好きな病院に勤務できないだけでなく、僻地の病院で働かされることもありうるわけです。
ただ、医局人事のネガティブな部分は工夫次第で回避することができます。
この記事を読めば医局人事の良いところも、理不尽なところもわかりますよ。
医局人事は医師の異動!拒否できない仕組み
医局とは、大学医学部と大学病院のなかにある、教授をトップとする組織のこと。
医局は大学の近隣にある病院と提携していて、医局人事では医局員をそれらの関連病院に派遣します。
医局人事の最終的な決定権者は教授ですが、ほとんどの決断は医局長が下します。医局長は教授の意を汲んで医局人事を決め、教授がそれを承認するという形です。
なぜ医局人事が必要なの?理由3つ
医局が医局人事を行う理由は主に次の3つ。
医師が経験を積むため
医局人事には良い面もあって、それは若手の医師が経験を積めることです。
同じ診療科、同じ治療方針でも、病院や医師によって微妙に内容が異なります。
医局人事で病院を転々とすれば、複数の上級医から教わることができるので、いろんなやり方が学べます。
自分で転職活動をして病院を転々とするより、医局人事で病院を変えていったほうが楽ですよ。
関連病院に医師を送るため
よく「この病院は○○大学系列」と言われたりしますが、これは「その大学の医局の関連病院である」という意味です。
医局は医局人事を使って医局員を関連病院に派遣します。
関連病院は医局員に臨床経験を積む場(職場)を提供する代わりに、医局から医師の補充を受けることができるわけです。
つまり医局と関連病院はwin-winの関係にあります。
田舎・地方の医師不足を解消するため
医局は田舎の病院や地方の病院に医師を送ることで社会貢献をしています。
地方の病院は医師不足で困っていますからね。
また多くの医師は将来、地域医療に携わることになるので、地方での経験が役に立ちます。
ただ、やはり若い医師は都会で暮らしたいもの。
地方病院勤務を苦行に感じる医局員は少なくありません。
医局人事の仕組みは?異動時期とタイミング!
医局人事は教授の意向、医局員の希望、関連病院の要望などを考慮して医局長が決めます。
人事異動による勤務開始は4月
医局人事の異動で最も多いのが4月1日。次いで10月1日です。
その日に新しい病院での勤務が始まるので、勤務開始日の1、2週間前には引っ越しを済ませておく必要があります。
しかも異動前の職場では、自分の後任になる医師に引き継ぎをしなければなりません。
そのなかで引っ越しの準備をしたり、異動の挨拶をしたりしないとならないので、1、2カ月前からバタバタしますよ。
医局人事の発表は12月末
4月1日が勤務開始日の場合、人事異動の発表は12月末に行われます。10月1日が勤務開始日の場合は発表は8月末。
この発表でどの地域のどの病院で働くのかが決まります。
したがって医局内の医局員たちは、11月または7月ぐらいからソワソワし始めます。
10月に希望調査が取られる
医局長は10月ごろ、医局員全員に対し、来年度の人事に対する希望調査を行います。
医局長や教授は、この調査結果を元に次の医局人事を決めるので非常に重要です。
医局員は異動希望調査票に、行きたい病院の名前を書きます。
異動希望調査票に第5希望まで書く欄があったら、すべて埋めましょう。
白紙で提出をすると「どの病院でもいい」と思われて、ハードな職場や大学病院に決まってしまいます。
【年代別】医局人事で動く年齢は?傾向と異動頻度
医局人事は年齢によって異動頻度が違います。
各年代ごとで役職や立場が変わってくるので、異動頻度が変化するのです。
【20代〜30代半ば】2年に1回異動
20代~30代半ばは2年に1回異動が行われます。そのため10年で5回以上勤務先病院が変わることもあり、なかなか大変ですね。
このころは医師も結婚適齢期。入籍や結婚式、一緒に住むための引っ越し、子供が生まれたことによる引っ越しが行われているさなかに人事異動による引っ越しが重なると、生活が混乱しかねません。
ワークライフバランスを調整することは相当難しいのです。
【30代後半〜40代半ば】6年に1回異動
30代後半に入ると異動頻度は減り、6年に1回ほどになります。
40代半ばになると関連病院で医長や副部長に就く人が増えてきます。各種委員会などの病院経営に関わる仕事が増えますし、後輩医師の育成にも携わらなければなりません。
プライベートでは子供の受験が始まったり住宅を購入したりと出費が増える時期でもあります。
この時期稼ぎを増やすため、高額収入で迎えてくれる僻地病院に異動を希望する医局員もいます。
【50代以降】異動はなし
50代に突入すると異動はめっきりなくなります。順調にいけば医局の関連病院の1つである総合病院の部長に就任できるケースも。
そのまま異動を希望しなければ、同じ病院内で部長から副院長、院長へと昇格することもあります。
そこで定年退職を迎えることも多いでしょう。
医局人事で田舎に飛ばされたくない!左遷されないコツは?
医局人事で田舎病院に左遷されないコツは3つあります。
それだけ、と思いましたか。これが結構効くんです。
希望調査はすべて埋める
医局長から異動希望調査票を受け取ったら、希望先欄はすべて埋めてください。
医局長は人気の病院に派遣する医局員を、その病院を希望した医局員の中から選びます。
「希望先を書かないほうが医局に従順だと思ってもらえる!」なんて考えないほうがいいですよ。
白紙で出したら、医局長は「好都合だな。この医局員に僻地病院に行ってもらおう!」と捉えられてしまいます…。
左遷されたくないなら先に言う
人事が固まったら、それを覆すことはできません。
左遷されたくなかったら、前もって医局長に「地方に行きたくないです」と伝えましょう。
しかし、ただ行きたくないというだけでは説得力がないので、行きたくない理由も説明してください。
結婚が控えている、子供がようやく進学校に入ることができた、親の介護が必要になりそうだ。
こうした「家庭の事情で致し方ない理由」は説得力を持ちます。
人事は希望を言ったもの勝ち!若手でもハッキリ伝える!
人事の希望は、若手だからといって遠慮する必要はありません。
医局人事でも結局は強く言ったもの勝ちなところがあります。
中には、本音は地方に行きたくないだけなのに「都心のあの病院は、私がやりたい症例をたくさん扱っているんです。だから絶対にそこに行きたい。行かせてもらえないなら医局辞めます!」と、強気で攻める医局員もいます。
ずるいと感じるかもしれませんが、医局人事にあらがうにはこれくらいのことが必要な場合があるんです。
医局人事の良いところは?医局員のメリット!
医局人事には良いところもあるので紹介します。
経験が積めて症例実績が豊富になる
経験を積んで、力のある医師になりたいと思っている医局員は、医局人事に従順にしたがったほうがいいかもしれません。
複数の病院に勤めることで、難しい症例に出会えたり、希少疾患を診ることができたりします。
地方医療や僻地医療の経験も医師人生には役立ちますよ。
病院ごとに関わる人が増えて人脈が広がる
医局人事で病院を転々とすると、関わる人が増えるので人脈が広がります。
医療の仕事は医師一人ではできません。別の医師の力を必要とすることがあり、頼りになる先輩や同僚に助けられる場面はたくさんあります。
人脈で救われた医師は非常に多いですよ。
キャリア形成や出世につながる
医局内での出世を望むのであれば、医局人事に従順であったほうがよいでしょう。
医局長も教授も、人事に困ったときに従順にしたがってくれた医局員に恩を感じるはずだからです。
また医局長の中には、医局員のキャリア形成を考えて異動先を決めてくれる人もいます。その場合、医局人事にのっていれば自然と力がつくでしょう。
た・だ・し、それでも注意しなければならないのが医局人事なんです。
医局人事の悪いところは?注意したいデメリット
少なからぬ医局員が医局人事を嫌うのは、次のような悪い点やデメリットがあるからです。
医師の仕事はただでも大変なのに、さらにこれだけの大変さが加わるんです。
引越しでお金と労力がかかる
医局人事にともなう引っ越し費用は原則、医局員自身が全額負担します。
若手のころは2年に一度の頻度で異動が発生するので、その都度数十万円規模の出費が必要になります。
決して安く額ではなく、毎回かかると非常に痛手です。
仕事を持つ家族や学校に通う子供にも迷惑がかかります。
新しい環境に慣れるまで疲弊する
異動は見知らぬ職場に出向くことを意味します。
見知らぬ病院、見知らぬ上司、見知らぬ看護師、見知らぬ患者、見知らぬ土地の見知らぬ風習、見知らぬ近所の人たち…。
これらはすべて仕事ストレスと生活ストレスになります。
新しい環境に慣れたころにはすっかり疲弊している、なんてことも。
そして疲弊から立ち直ったと思ったら次の人事異動が待っているんです。
年収が下がる可能性がある
「医局人事で赴任したのに年収が下がるなんてことがあるのか」と思うかもしれませんが、起こりえます。
医師の年収は都心部ほど低く、地方ほど高い傾向にあります。医局人事で地方病院から都心病院に異動したら年収は確実に下がります。
医局を辞めてフリーランスになれば病院側と年収交渉ができますが、医局人事で派遣される場合、医局と病院で取り決めた年収になることが多いでしょう。
そもそも高額年収を狙っている医師は、早々に医局を抜けるか、そもそも医局に入りません。
医局人事を断ることはできる?基本的に拒否できない!
医局人事が発令されたあと、医局員は断ることはできるのでしょうか。
かつては不可能でしたが、今はどうかというと、今も不可能と考えてよいでしょう。
医局人事の性質と、これを乗り切るコツはこのようになります。
異動が決まったら断れない
もちろん異動が決まったあとでも、医局員には拒否する権利があります。
しかし実際にそんなことをしたら、医局長や教授に迷惑をかけるだけでなく関連病院も困惑するため大混乱を引き起こします。
だから医局人事は断れないと考えて、事前に対策をしておいた方がいいんです。
もちろん異動が決まったあとでも、医局長や教授が納得できる緊急かつ重大な事情が発生した場合は別ですよ。
どうしても無理なら早めに伝えるべし
異動が決まったあとに重大な事情が発生したら、すぐに医局長に相談しましょう。
家族が都会の大規模病院で治療することになった、さっき妊娠がわかった、親との同居が急遽決まった!など。
このような重大かつ緊急性の高い理由であれば、医局長は異動を取り下げてくれるでしょう。
ただし今回の異動はそれで免れても、次の異動では同じ手が通じないので、僻地行きが待っているかもしれません…。
医局人事を避けたいなら医局を辞めるのもあり
医局員が事前に医局長に「絶対にこの病院には行きたくない」と伝えていたのに、その病院への異動が発令されたらどうすればよいでしょうか。
まずは冷静に、医局長に理由を聞きましょう。
その理由に納得できなかったら、医局を辞める覚悟を決めるのも「あり」です。
横暴な人事を乱発する医局はいまだに存在します。そんな医局の人事に付き合っていたら、自分の人生だけでなく家族の生活も被害を受けます。
医局人事で飛ばされないために!転職サイトを見ておくのがおすすめ
医局人事が決定して「飛ばされた」「左遷させられた」とショックを受ける前に、転職サイトをチェックしておきましょう。
転職サイトをみれば、医局を辞めたフリーランスの医師でも、さまざまな病院、クリニックに転職できることがわかりますよ。
医局を辞めてもキャリアを形成できる、と思うことができれば、医局長に堂々と「あの病院には行きたくないです」と言えます。
医局にいるうちから転職サイトにアクセスしておくことをおすすめします。
医師転職ドットコム
なんといってもおすすめは医師転職ドットコムです。
その理由は求人数がダントツ多いから。
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エージェントさんの質も高く、とても親身になって相談にのってくれます。
ここだけの話、他の転職サイトでは断られてしまうような相談にも親身になってのってくれます。
相当難しい条件の転職や相当医局をやめにくい状況でも大変頼りになりますよ。
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【まとめ】医局人事は拒否できない!フリーランスの選択肢も持っておこう!
医局人事の仕組みや、左遷を回避する方法を紹介しました。
- 異動希望調査票の希望先はすべて埋める
- 左遷されたくなかったら先に言う
- 人事の希望は言った者勝ち
- ときに医局を辞める覚悟も必要
医局人事によるメリットもありますが、デメリットも多いのも事実です。
最良の医師人生は、医局のなかにあるかもしれませんが、医局の外にあるかもしれません。
フリーランスの選択肢を持っておけば、医局のなかでも外でも良い道を歩むことができます。